2016年11月14日月曜日

20161113 北杜夫「楡家の人びと」読了 歴史を扱った長編小説の面白さ・・

『ついさきほど「楡家の人びと」第三部を読了しました。

この著作の読了後の充実感もなかなかのものであり、直近に読みました野上彌生子著「迷路」の読了感に近いものがありました・・。

また「楡家の人びと」の結末部での記述からは、これまでの著作、映画などにおいてよく見られる「戦後社会での希望の芽吹き」などよりも、どちらかというと、一つの時代精神、価値観の崩壊および、そこから否応なく生じる混乱、虚脱といった要素の方が強く描かれているように思われます・・。

そして、それ故にこの著作を現在なお読むに値するものと為し、また同時にこのことは「迷路」(「迷路」は具体的な戦後社会までは描いていないにしても、そうした予感については言及している)についても、ある程度共通していえるのではないかと考えます。

また「迷路」に関しては、その描かれている時代精神、価値観がさらに古い江戸時代をも包括しているという点から、作中に描かれる歴史の重層性あるいは反復性、関係性といったものがより明示され、そこから、この著作を面白く、味わい深いものとしているのではないかと考えさせられます・・。

そして、その伝で考えていきますと、近現代を扱った様々な著作において、こうした特徴(歴史の重層性あるいは反復性、関係性などが示唆されている)を持つものとは、思いのほか少ないのではないだろうか・・?と考えてしまうのですが、如何でしょうか・・?

その一方において、現在の我が国社会において「手軽に歴史を認識しよう、あるいは、したような気分になろう」といった、傾向が少なからず存在するのではないかとも考えさせられます・・。

こうした傾向とは、あるいは本職の史家、社会学者などの方々からしますと、噴飯ものであるのか、あるいは自身の仕事を増やし、その重要性を(一時的にではあれ)高めるものとして便乗するに悪くないものであるのかは分かりませんが、私見として、そうした傾向とは、本質的にはあまり良いものではないと考えます・・(特に現今の我が国の場合)。

それに加え、歴史の認識を面白いと感じる方々というのは、どの時代を通じてあまり多くはなく、さらには若い頃の情熱により、それを面白いと感じたとしても、その情熱がホンモノであるかどうかとは、ある程度の年月を経てみないと判然としないとも考えます。

また、自身についても、こうした著作を読むことに関しては特に問題なく、また同時に如上のようなことを記す程度においては特に問題はないのかもしれませんが、では実際にそうしたことを専門とする学問分野の研究者と伍することが出来るのか?と問われると、それはいささか躊躇してしまいます・・(苦笑)。

では何故、これまで少なからず「歴史」を主題としてブログ記事を作成、投稿してきたのかと考えてみますと、おそらく素人、アマチュアなりに表出したい主題が、この分野に集中しており、また、その表出の文体、語彙などにおいて、これまでの経験にて、どうにか間に合わせることが出来たからであると考えます・・。

その意味において、これまで作成し続けている一連のブログ記事とは、自身の文体、語彙を再認識あるいはそれらを精錬する上において一定の寄与をしているものと考えます・・。

また、それと同時に、これまでの記事を如何なる思い、興味によるものか分かりませんが(自身としては)比較的多くの方々に読んで頂いていることが、ブログ記事作成の主要な動力源となっております。

そして今後、特に何ごともなく500記事にまで到達することが出来ましたら、その次は一体どうなるのであろうかと最近不図思ってしまうところではありますが、こうしたことはあまり深く捉えず、500記事到達までは、ただ一記事ずつ作成投稿し続けるのみではないかと考えております・・。

そして、当初の主題から大分ずれてしまいましたが「楡家の人びと」は三部構成の長編ではありますが、我が国の近現代史上での具体的様相を知りたい方々、何か面白い長編を読みたいと考えている方々にとって、大変面白く読むことの出来る著作ではないかと思います。

興味がありましたら、是非、御一読ください。


そして、これを読了されましたら、次に野上彌生子「迷路」を読むのも面白いかもしれません・・。

また、そこで「さらに刺激の強い著作を!」と望まれるのでしたら「神聖喜劇」をおススメします。

私の方はまたインターバルを置き、次なる長編小説あるいは他のそれに類する著作に挑戦しようと考えております・・。

今回もここまで興味を持って読んで頂き、どうもありがとうございます。

さる熊本での大地震、昨今の山陰東部での大地震により被災された地域の出来るだけ早期の諸インフラの復旧および、その後の復興を祈念しております。』











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